1939年に国際会議で楽器の基準となる音はA=440と決められましが最近ではA＝442が主流になっています。時代とともに少しずつ高くなっていく傾向があります。バッハ曲をの古楽器を演奏する際にはA＝415（バロックピッチ）で、モーツァルトの時代の曲はA＝430（クラシカルピッチ）で演奏するとよいとされています。バロックピッチは現在のピッチよりも半音低く、クラシカルピッチは半音の半分低い音です。私には絶対音感はないのですが、訓練のために毎朝「ロ」と思う音程を声に出すようにしています。すると不思議なことにたいがいDではなくちょっと低いD♭の音程になってしまします。その音の方がしっくりくるのでどうやら古い人間のようです。

現在の標準的な１尺８寸管はロ＝Dに合うように作られていますが、１尺８寸の長さで竹を切って尺八を作ると必ず「ロ」はDよりも低くなります。江戸時代の虚無僧の尺八は今よりも低いピッチでしっとりと落ち着いた音色だったことでしょう。ただ1本1本微妙に音程が異なるので大勢で吹く場合にはピッチが合わず困ったこともありました。しかし演奏に習熟してくるとメリカリ操作を行うこととで周りの音を合わせることができるようになります。「調子（本調べ）」はそのための準備運動もしくは音を合わせるエチュードのようなものだったのでしょう。地無し尺八はそもそも強い息を入れて大きな音を出すものではなく、適切な息のスピードで良い音色を出すことに価値があります。伝統調律の音階はメリカリ操作必須ですし浅い歌口は弱い息にも反応してくれます。一度地無しの１尺９寸管を吹いてみて「昔の尺八の音色」を味わって欲しいと思います。https://youtu.be/FJcEXOqVMTE

【諸元】長さ580mm 重さ243g 頭部直径35mm   底部直径40mm 歌口内径縦20mm 横20mm エッジ深さ3.5mm 最大指孔11.5mm

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