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昭和35年(1960)に、東都書房から出版された日本推理小説
大系第13巻『鮎川哲也・日影丈吉・土屋隆夫集』(初版)である。
この全集の格調の高さは、編集委員に江戸川乱歩・平野謙・荒正人・
中島河太郎・松本清張といった顔ぶれで窺い知ることができる。
【目次 収録作品と解説】
●鮎川哲也
・『黒いトランク』
●日影丈吉
・『内部の真実』
・『かむなぎゅうた』
●土屋隆夫
・『天国は遠すぎる』
・解説 江戸川乱歩
【著者紹介】
●鮎川哲也(1914~2002)東京生まれ満州育ちの推理作家で
ある。本名は中川透。現在、本格ミステリーの新人登竜門「鮎川哲也
賞」で知られている。昭和25年(1950)、本名で推理小説『ペ
トロフ事件』を『別冊宝石』に発表し作家デビューした。
その後、書き下し長編『黒いトランク』から、おもに鮎川哲也をペ
ンネームを名乗るが、那珂川透の別名もある。『黒い白鳥』『憎悪の
化石』の2長編で、昭和34年度の日本探偵作家クラブ賞(現、日本
推理作家協会賞)を受賞した。
『人それを情死と呼ぶ』『死のある風景』『戌神はなにを見たか』
『死びとの座』と先にあげた『黒い白鳥』『憎悪の化石』などは、探
偵の鬼貫警部が登場する〝鬼貫物〟である。探偵「星影龍三」が登場
するのが『リラ荘事件』『白の恐怖』『朱の絶筆』などで、鉄道時刻
表をつかったアリバイ崩しをはじめ、多彩なトリックを駆使して読者
を楽しませた。また、評論やエッセイにも定評が高かった。
平成2年(1990)に鮎川哲也賞」が創設され、本人も選考委員
を務めた。平成13年「第1回本格ミステリー大賞・特別賞」を、そ
の翌年には「第1貝日本ミステリー文学大賞・特別賞」を受賞した。
平成14年に他界。享年83歳であった。
●日影丈吉(1908~1991)昭和後期に活躍した小説家・翻訳
家である。東京出身。本名は片岡十一。日露戦争後の明治末に生まれ、
当時、モダンで自由な気風で知られた専門学校・アテネ・フランセ
で学び、大正デモクラシーを謳歌した。しかし昭和戦前は欧米文化
蔑視の軍国主義下で、趣味の仏文は人知れず胸中に内包していた。
昭和31年(1956)『狐の鶏』で日本探偵作家クラブ賞を受賞。
最晩年の平成2年(1990)『泥汽車』で泉鏡花文学賞に輝いた。
G・ルルー「黄色い部屋」などフランス・ミステリーの名翻訳が多
数手がけた。エッセイに「味覚幻想」など。平成3年に死去。享年
83歳であった。
●土屋隆夫(1917~2011)長野県生まれの推理作家。中央
大学法学部卒業後、日中戦争・太平洋戦争により、学業にはブラン
クが生まれた。戦後は郷里の中学校で教職につき、そのかたわら推
理小説に首ったけとなり、自ら創作も手がけ長編処女作『天狗の面』
や『危険な童話』などを発表した。目のつけどころ斬新さと巧みな
構成力が売り物で、昭和38年(1963)に『影の告発』で日本
推理作家協会賞を受賞した。その後、トリックの工夫とリアリティ
ーの融合を目ざした新本格派の作家となった。創作以外にも、小説
づくりの楽屋裏を描いた『推理小説作法』もある。
【編集委員のことば】
●江戸川乱歩
日本推理小説の代表的作品を明治、大正から現代まで、系統的に集大
成した全集は、従来しばしば企てられたが一度も実現していない。今、
東都書房は敢然としてこの大仕事と取り組み、編集委員を選んで論議
を尽くした上、内容を決定、いよいよ発刊の運びとなったことは慶賀
にたえない。涙香、露伴から松本清張、仁木悦子にいたるこの網羅的
大集成は、新しい読者が過去の著名な作品を展望されるためにも、ま
ことに好適。装丁も書架を飾るにふさわしいものとして発売されるは
ずである。
●中島河太郎
かねてからの念願がようやく実現することになった。日本の推理小説
の史的展開を裏付け、同時に路標的佳作の数々を収めるような総合決
定版が欲しかった。豊富な収穫を圧縮した分量に盛った今度の試みは
画期的である。愛好家の座右に欠かせられないことはいうまでもなく、
無数の作品の前に戸惑う一般読書人に格好の贈り物と信ずる。
【日本推理小説大系 全巻紹介】
①【明治大正集】
②【江戸川乱歩】
③【甲賀三郎・角田喜久雄】
④【木下宇陀児・浜尾四郎集】
⑤【小栗虫太郎・木々高太郎集】
⑥【昭和前期集】
⑦【横溝正史集】
⑧【島田一男・高木彬光集】
⑨【昭和後期集】
⑩【坂口安吾・加田倫太郎・久生十蘭・戸板康二集】
⑪【松本清張集】
⑫【有馬頼義・新田次郎・菊村到集】
⑬【鮎川哲也・日影丈吉・土屋隆夫集】
⑭【多岐川恭・仁木悦子・佐野洋集】
⑮【水上勉・樹下太郎・笹沢左保集】
⑯【現代十人集】
本の状態は、約60年前のもので函付の古書で初版「並」である。
軽年の函淵の小イタミ、小口などの小シミなど遜色は御容赦して下
さい。ですので、あまり神経質な方は御遠慮して下さい。発送は重
量1キロ以下で分厚い本なので、レターパックプラス(速達扱い)
520円で対応したいと思います。