川本桝吉 井村彦次郎 桃色白抜竹林文竹脚花瓶 瀬戸焼 横浜焼　

井村彦次郎（1897明治30年没）は奈良県の生まれで、元々は油商人でした。美濃や瀬戸から素地を横浜へ運び、陶磁器の絵付工場を明治８年（1875）に開きました。明治10年には職工200人を抱え、工場を４つ所有するまでになっていたようです。名古屋絵付けの先達、松村九助が開洋社を設立したのが明治11年ですから、民間の絵付工場としては井村彦次郎を嚆矢として良いでしょう。井村彦次郎はその後、横浜陶器売込商組合の会頭を務めるなど、常に横浜焼の先導者的立場にありました。

さて、出品の作品は瀬戸窯業界の重鎮、川本桝吉の素地に井村彦次郎が絵付けさせた花瓶です。特筆すべきは、その器形と意匠です。この二人の銘を併せ持つ作品は時折見かけることはありますが、殆どは無地もしくは染付の花瓶に花鳥文の上絵を施したものになります。しかし、本作は竹を脚部とした極めて特殊な器形です。川本桝吉に井村が特注で制作させたものと思われます。その特殊な形の器に高価な正円子の桃色を地色として墨弾きで竹林を白抜きで表し、更にその上に上絵で雀を描くという非常に凝った意匠です。底部には、井村彦次郎と川本桝吉の銘に加えて、「三号」と書かれています。おそらく何らかの海外展覧会に出品された際の出品番号と考えられます。

寸法は、高さが19cmです。ワレ、カケ、ヒビ、スレなどの後天的瑕疵はありません。未使用と言っても良いほどの保存状態です。

尚、私の出品写真と説明文をそのまま盗用して、格安で販売しますという詐欺サイトが最近いくつかあるようです。呉々も騙されないようにご注意下さいませ。私は、オークションサイト以外には出品しておりません。